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医薬品・医療機器の安全管理体制の確保の必要性について

1 はじめに

 医薬品や医療機器は、患者の健康や命に直結する極めて重要な製品です。その使用・管理には厳格な基準と体制が求められており、万が一不適切な取り扱いがあれば、深刻な健康被害や医療事故を引き起こしかねません。こうした背景のもと、医薬品・医療機器を取り扱う企業や医療機関には、安全管理体制の確立が強く求められています。本稿では、薬機法などの関連法令に基づいた安全管理体制の必要性と、具体的な対応方法について解説します。

2 安全管理体制確保の重要性

 医薬品や医療機器は、医療現場で日常的に使用されるものである一方、取り扱いを誤れば、重大な事故や健康被害の原因となるリスクも抱えています。例えば、保管方法の不備により薬剤が変質してしまったり、医療機器の点検不足が原因で正確な診断や治療ができなかった場合、患者の安全を著しく損なう恐れがあります。
 そのため、企業や医療機関は、単なる販売・使用にとどまらず、「安全に使用できる状態を維持する」ための体制づくりが求められており、これは企業の社会的責任の一部でもあります。

3 薬機法における安全管理義務

 薬機法では、製造販売業者に対して、厚生労働省令で定める基準に適合した品質管理及び安全管理を行うよう定めています。安全管理体制の構築・運用を義務付けている厚生労働省令は、以下のとおりです。
• GVP(Good Vigilance Practice)
:製造販売後の安全管理を定めた基準。副作用や不具合、外国での安全性情報の収集・評価・報告、必要な措置の実施等を定めています。
• GQP(Good Quality Practice)
:製品製造後の品質管理について定めた基準。品質管理責任者の設置、品質管理情報の収集・評価・報告等を定めています。

 例えば、医療機器で故障や重大な不具合が発生した場合、厚生労働省へ一定期間内に報告する義務があり、状況によっては製品回収や注意喚起などの措置も求められます。これらの義務は、企業の任意の対応ではなく、法的な義務となります

4 医療法や他法令との関連性

 医療機関においては、薬機法のみならず医療法や労働安全衛生法、個人情報保護法などの法令も関係してきます。たとえば、医療法に基づく医療安全管理体制として、医療事故防止のための研修や報告制度の整備が求められており、医療機器の安全な使用・保守点検の体制もここに含まれます。
 これらの法令は相互に関係しており、どれか一つを遵守すればよいというものではありません。すべての関連法令を俯瞰的に理解したうえで、横断的に整合性のある管理体制を構築することが求められます。

5 安全管理体制が未整備である場合のリスク

 安全管理体制が不十分であることにより、以下のような深刻なリスクが発生します。

① 行政処分・罰則のリスク
 薬機法違反が認定された場合、営業許可の取消し、業務停止命令、罰金刑などの厳しい処分を受ける可能性があります。
② 患者の安全を脅かすリスク
 不具合製品の見落としや保守不良によって医療事故が発生した場合、患者の生命に直結する損害が生じ、訴訟リスクや社会的批判の的となります。
③ 企業の信頼性・ブランド毀損リスク
 一度でも事故や法令違反が公表されれば、社会的信頼の低下は免れず、企業価値や収益にも大きな影響を与えます。

6 薬機法に詳しい弁護士が介入するメリット

 薬機法や関連法令に詳しい弁護士が関与することで、以下のような実効性ある支援が可能になります。

① 内部規定やマニュアルの整備
 医療機器安全管理マニュアルをはじめ、GVP手順書、緊急時対応マニュアルなどを法的視点から整備・更新。現場運用との整合を図ります。
② 契約内容の適正化
 保守・点検契約や販売契約において、「定期点検頻度」「部品交換基準」「故障時の代替機提供期限」などの条件を薬機法上の義務と一致させることで、後の紛争防止にもつながります。
③ コンプライアンス研修の実施支援
 従業員向けの法令順守研修や安全教育において、具体的事例や法的背景を交えた実践的な内容を提供することができます。

7 安全管理体制構築のための実務ステップ

 安全管理体制を構築・運用するには、以下のステップが有効です。

① 現状把握とリスクアセスメント
 体制の抜け漏れやリスク要因を洗い出し、優先順位をつけて対応。
② 内部体制と文書整備
 責任者の任命、報告ラインの明確化、教育訓練計画の策定。
③ 契約書・業務フローの見直し
 安全性確保に直結する契約条件や業務手順を精査・改訂。
④ 職員教育の実施と定着
 継続的な教育とマニュアル周知により、実効性を高める。
⑤ モニタリングと改善
 定期的な監査・評価を通じて、体制の改善サイクルを構築。

8 まとめ

 医薬品・医療機器の安全管理体制の構築は、企業や医療機関にとって単なる「義務」ではなく、患者の命を守るという「使命」です。法令順守と社会的信頼の確保を両立させるためにも、専門家の助言を受けながら、組織としての対応力を高めることが不可欠です。

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