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医療法務コラム

日常業務に関する法律問題

オンライン診療

1.はじめに

 コロナ禍でオンライン診療が注目されています。しかし、実際にオンライン診療を行っているという話はあまり聞こえてきません。オンライン診療には、どのような法律上の注意点があるのでしょうか。

2.医師法20条違反になるか

 オンライン診療を行うにあたって注意しなければならないのは、医師法違反にならないかどうかです。医師法20条は,医師が「自ら」診察せずに治療等をしてはならないと規定しています。オンライン診療は,医師が患者の目の前にいるわけではなく、あくまで画面越しにいるだけですので、医師が「自ら」診察したことにならないのではないかが問題となるのです。

 しかし、わざわざ病院に行かなくてもよいオンライン診療は、過疎地や離島の医療を支える手段として期待されています。また、「病院に診察を受けに行って逆に風邪をもらってきた」という話はよくありますが、このような二次感染のリスクを防ぐこともできます。

 そこで、平成9年以降、厚生労働省は数々の通達を出し、徐々にオンライン診療を認める範囲を広げています。厚生労働省の定める「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の定める内容を遵守してオンライン診療を行えば、医師法20条違反にはなりませんので、同指針の内容を正確に理解しておくことが重要です。以下では、令和4年1月に改訂された「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の概要について解説します。

3.「オンライン診療の適切な実施に関する指針」令和4年1月改訂の概要

(1)初診はかかりつけ医の原則
 オンライン診療では、得られる情報が視覚聴覚に限られています。触診はできませんし、細かな顔色や表情等を画面越しに読み取るのも限界があります。そのため、オンライン診療には、疾病の見落としや誤診のリスクがあります。

 そこで、こうしたリスクをできる限り低減させるため、オンライン診療の初診は、原則として、日ごろから患者の心身の状態を把握しているかかりつけ医が行うこととされています。もっとも、患者の十分な医学的情報を、過去の診療録等から事前に把握でき、医師が可能と判断した場合は、かかりつけ医以外が初診からオンライン診療を行うこともできます。この場合、事前に把握した情報を診療録に記載する必要があります。

(2)診療前相談について
 このように、かかりつけ医以外が、初診からオンライン診療を行おうとする場合に、事前の情報把握のために、医師・患者間で映像を用いたリアルタイムのやり取りを行い、医師が患者の症状及び医学的情報を確認する行為を、「診療前相談」といいます。診療前相談には、診断、処方その他の診療行為は含まれません

 診療前相談を行うにあたっては、結果としてオンライン診療が行えない可能性があることや、診療前相談の費用等について、あらかじめ患者に十分周知することが必要です。

 診療前相談により、適切な情報が把握でき、医師と患者の双方がオンライン診療可能と判断し、相互に合意した場合に、オンライン診療を行うことができます。診療前相談により、オンラインではなく対面での受診が必要と判断した場合は、対面診療を行う必要があります。その対面診療を行うのが他院である場合は、診療前相談で得た情報を、必要に応じて適切に提供しなければなりません。

(3)症状について
 上述の通り、オンライン診療では,得られる情報が限られているため、オンライン診療に適さない症状があります。一般社団法人日本医学会連合が作成した「オンライン診療に適さない症状」等を踏まえて、オンライン診療が困難な症状ではないかを医師が判断し、オンライン診療が適さないと判断した場合には対面診療を行う(又は対面診療可能な医療機関を紹介する)ことが求められています。また、緊急性が高い症状の場合は、患者に対し速やかに対面受診を促すこととされています。

(4)処方について
 オンライン診療によって得られ情報は限られているため、初診の段階から安全に処方することのできない医薬品があります。そのため、初診からオンライン診療の場合や、オンライン診療で新たな疾患に対して医薬品の処方を行う場合は、一般社団日本医学会連合が作成した「オンライン診療の初診での投与について十分な検討が必要な薬剤」等、関係学会が定める診療ガイドラインを参考に行うこととされています。

 また、初診の場合に以下の処方は行わないこととされています。

  • 麻薬及び向精神薬の処方
  • 基礎疾患等の情報が把握できていない患者に対する、特に安全管理が必要な薬品(診療報酬における薬剤管理指導料の「1」の対象となる薬剤)の処方
  • 基礎疾患等の情報が把握できていない患者に対する8日分以上の処方

(5)対面診療の実施体制
 かかりつけ医以外が初診からオンライン診療を行う場合、安全性を担保するため、オンライン診療後に対面診療につなげられるようにしておくことが求められます。具体的には、オンライン診療後に対面診療が必要と判断した場合には、以下の対応が求められます。

  • かかりつけ医がいる場合→オンライン診療を実施した医師が、かかりつけ医に当該患者を紹介する。
  • かかりつけ医がいない場合→オンライン診療を実施した医師が対面診療を行うことが望ましいが、患者の近隣の医療機関を紹介することもありうる。ただし、オンライン診療を実施した医師自身では対応困難な疾患・病態の患者や緊急性のある場合については、より適切な医療機関に自ら連絡して紹介する。

4.まとめ

 以上の通り、オンライン診療には大きな可能性もありますが、リスクも伴います。オンライン診療を安全に行うため、またオンライン診療について法的責任を問われないためにも、厚生労働省や日本医学会連合の最新の動向を把握しておく必要があります。オンライン診療についてお悩みの医療機関の方がいらっしゃいましたら,ぜひ医療法務に精通した弁護士にご相談ください。

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