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人材紹介のトラブルと金銭問題:医療機関経営者が知っておくべき注意点

1 医療機関における人材紹介のトラブルの現状

 医療機関が人材紹介サービスを利用する際には、効率的な採用が期待できる一方で、トラブルや金銭的問題が発生するリスクもあります。実際に、人材紹介サービスを利用する医療機関からは、以下のようなトラブルが報告されています。
・人材紹介会社との契約内容が不明瞭で、返金や保証が適切に行われない。
・高額な紹介手数料を支払ったにも関わらず、紹介された人材が短期間で退職する。
・信頼性の低い業者の選定により、予想外の損失が発生する。

2 人材紹介サービスで起こりうる金銭トラブルとは?

 以下のような場合に、人材紹介会社との間で金銭的トラブルが発生するおそれがあります。
不明確な手数料:手数料の内訳や説明が不明で、人材紹介会社から、契約時に認識していた金額とは異なる金額の手数料を請求された場合。
早期退職による返金問題:採用者が早期退職した場合の返金規定が明記されていない場合。
違法行為の可能性:法律で定められた上限を超える手数料請求や不適切な契約条件。

3 トラブル事例:看護師の早期退職と金銭問題

 医療機関で採用された看護師が採用後1カ月以内に退職したため、医療機関は、人材紹介会社に支払った手数料の返金を求めようとしました。しかし、人材紹介会社は、契約書に人材が早期退職した場合の返金条項を入れていませんでした。
 このような場合、人材紹介会社は契約書に返金について定めた条項がないことを理由に返金対応を拒否するでしょう。早期退職時の返金規定がない以上、医療機関が返金を求めるのは困難です。医療機関は、再びコストをかけて新たな採用活動をせざるを得えません。

4 人材紹介会社との金銭トラブルを避けるためのポイント

(1)認定職業紹介会社から選ぶ

 厚生労働省は、法令遵守及び採用・定着・マッチングについて一定の基準を満たした職業紹介事業者について、職業紹介優良事業者と認定し、認定マークを利用する権利を与えています。職業紹介優良事業者としての認定を受けるには、手数料を公開している、早期退職時の返金制度を定めている等の厳しい審査基準を満たす必要があります。職業紹介優良事業者から人材紹介会社を選んでおけば、トラブルとなるリスクを低減することができます

(2)契約内容を確認する

 以下のポイントについて契約書に記載があるか、しっかりと確認しておきましょう。契約書の内容を事前に専門家に確認してもらうことも有効です。
・返金規定や保証期間
・手数料の内訳
・紹介を受けた労働者が早期退職した場合の対応

(3)手数料の相場を把握する

 一般的には、紹介手数料は紹介した労働者の年収の30%〜35%程度が相場と言われています。この範囲は、職種や業界、紹介する人材の専門性や希少性によって異なる場合があります。例えば、エグゼクティブ層や専門職向けの人材紹介の場合、手数料率が高くなる傾向があります。一方、一般的な職種では上記範囲内に収まることが多いので、この範囲を超過する場合は慎重に判断する必要があります。

5 法律で定められた人材紹介手数料

(1)紹介手数料の上限

 紹介手数料の徴収方法は、「①上限制手数料」または「②届出制手数料」の2つがあります。人材紹介会社は、事業の許可申請時に①か②のどちらかを厚生労働省に届け出ることになります。
 「①上限制手数料」では、紹介した労働者に支払った6ヶ月分の賃金の11%(免税事業者は10.3%)を限度に紹介手数料の徴収が可能です。
 「②届出制手数料」では、厚生労働大臣に届け出た範囲内で自由に手数料額を定めて徴収することができます。しかし、実務的には紹介した労働者の年収の50%を超えた手数料額を届け出ても許可が下りないため、実質的に50%が上限となっています。

(2)禁止行為

 人材紹介会社は、職業安定法上、以下のような行為を禁止されています。
・求職者側から手数料を徴収することは、原則禁止されています。
・人材紹介会社は、自己の名義をもって、他人に有料の職業紹介事業を行わせてはなりません。
・人材紹介会社は、厚生労働大臣に対してあらかじめ届け出た職種以外について、人材紹介を行うことは出来ません。また、港湾運送業務及び建設業務は一律に人材紹介が禁止されています

6 医療機関経営者が取るべき対策

(1)契約時の注意点

 人材紹介会社との契約書の内容を十分に確認し、手数料額や早期退職時の返金について不明瞭な点があれば契約を締結しないことが重要です。

(2)雇用条件の見直し

 採用した労働者が長期雇用となるかは、採用した側の企業努力も必要です。労働者が長期間勤務しやすい環境を整えるため、以下のような取り組みを行うことが考えられます。
・柔軟な勤務体制の整備
・福利厚生の充実
・メンタルヘルスサポートの提供

(3)相談窓口の活用

 人材紹介に関するトラブルについて、厚生労働省や各都道府県の労働局が相談窓口を設置しています。トラブルが発生した際は、各相談窓口を積極的に利用してアドバイスを得るようにしましょう。

7 弁護士への相談の必要性

 人材紹介会社との契約内容に問題がある、人材紹介会社が返金対応を拒否するといったトラブルが発生している場合、契約書の内容を精査して法的な観点から問題解決を検討する必要があります。早期に適切な対応を講じることで、トラブルが大きくなることを未然に防ぐことも出来ますので、人材紹介会社とのトラブル発生時には、弁護士にご相談ください。

8 まとめ

 医療機関が人材紹介サービスを利用する際には、信頼できる業者の選定や契約内容の確認が重要です。円滑な人材採用が実現すれば、医療機関の経営を安定につながります。トラブルが発生した際には、法律に基づいた適切な対応を講じることで、金銭トラブルのリスクを最小限に抑えることができますので、早期に相談窓口や弁護士を活用して適切な解決策を講じることが必要です。

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