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医療機関特有の広告規制

1.はじめに

 近年は、医療機関もインターネット等で広告を行うことが増えています。しかし、医療機関の広告に対しては特有の規制があるため、他の事業者とは異なる注意が必要です。そこで、本記事では、医療機関が広告を行う際の注意点を解説します。

2.医療機関の広告を特に規制すべき理由

 医療は人の生命・身体にかかわるサービスであるため、不当な広告により受け手(患者)側が誘引されて不適当なサービスを受けた場合、他の分野に比べて著しい被害が生じてしまいます。また、医療は極めて専門性の高いサービスであるため、広告の受け手(患者)はその文言から提供される実際のサービスの質について事前に判断することが非常に困難です。こうした理由から、医療広告に対しては、他の広告とは異なる特有の広告規制がかけられているのです。

3.医療機関の広告規制の概要

 以上のような医療広告の特性を考慮し、医療広告には、以下のような規制がかけられています。
①:医療広告には、原則として、医療法の定める15項目しか広告することができません。この15項目を、広告可能事項といいます。
②:ただし、一定の要件を満たした場合、広告可能事項の限定が解除されます。
③:要件を満たしていたとしても、一定の広告は禁止されています。これを、広告禁止事項といいます。
 以下では、①~③の詳細を解説します。

4.広告可能事項(①)

 医療広告では、原則として、以下の15項目についてしか広告することができません

  1. 医師又は歯科医師である旨
  2. 診療科名
  3. 当該病院又は診療所の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項並びに当該病院又は診療所の管理者の氏名
  4. 診療日若しくは診療時間又は予約による診療の実施の有無
  5. 法令の規定に基づき一定の医療を担うものとして指定を受けた病院若しくは診療所又は医師若しくは歯科医師である場合には、その旨
  6. 医療法第5条の2第1項の認定を受けた医師である場合には、その旨
  7. 地域医療連携推進法人の参加病院等である場合には、その旨
  8. 入院設備の有無、医療法第7条第2項に規定する病床の種別ごとの数、医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の従業者の員数その他の当該病院又は診療所における施設、設備又は従業者に関する事項
  9. 当該病院又は診療所において診療に従事する医療従事者の氏名、年齢、性別、役職、略歴その他の当該医療従事者に関する事項であって医療を受ける者による医療に関する適切な選択に資するものとして厚生労働大臣が定めるもの
  10. 患者又はその家族からの医療に関する相談に応ずるための措置、医療の安全を確保するための措置、個人情報の適正な取扱いを確保するための措置その他の当該病院又は診療所の管理又は運営に関する事項
  11. 紹介をすることができる他の病院若しくは診療所又はその他の保健医療サービス若しくは福祉サービスを提供する者の名称、これらの者と当該病院又は診療所との間における施設、設備又は器具の共同利用の状況その他の当該病院又は診療所と保健医療サービス又は福祉サービスを提供する者との連携に関する事項
  12. 診療録その他の診療に関する諸記録に係る情報の提供、医療法第6条の4第3項に規定する書面の交付その他の当該病院又は診療所における医療に関する情報の提供に関する事項
  13. 当該病院又は診療所において提供される医療の内容に関する事項(検査、手術その他の治療の方法については、医療を受ける者による医療に関する適切な選択に資するものとして厚生労働大臣が定めるものに限る。)
  14. 当該病院又は診療所における患者の平均的な入院日数、平均的な外来患者又は入院患者の数その他の医療の提供の結果に関する事項であって医療を受ける者による医療に関する適切な選択に資するものとして厚生労働大臣が定めるもの
  15. その他前各号に掲げる事項に準ずるものとして厚生労働大臣が定める事項

5.広告可能事項の限定解除(②)

 以下の4つの要件をすべて満たす場合には、例外的に広告可能事項の限定が解除され、広告禁止事項(③)以外の広告が可能になります。

㋐医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
㋑表示される情報の内容について、患者等が容易に照会できるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること
㋒自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること
㋓自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること

 バナー広告や検索連動型広告は、㋐の要件を満たしません。

 ㋒及び㋓の情報掲載場所については、患者にとって分かりやすいように十分配慮する必要があります。たとえば、リンクを貼った別のページで掲載したり、利点や長所に関する情報と比べて極端に小さな文字で掲載したりしてはいけません

6.広告禁止事項(③)

 たとえ上記㋐~㋓の要件を満たす場合であっても、以下の事項については広告が禁止されています。

Ⓐ虚偽広告
Ⓑ比較優良広告
Ⓒ誇大広告
Ⓓ公序良俗に反する内容の広告
Ⓔ患者等の主観に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談
Ⓕ治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等(いわゆるビフォーアフター写真)

(1)Ⓐ虚偽広告
 たとえば、「絶対安全な手術です!」という広告は、絶対安全な手術が医学上あり得ないことから、虚偽広告として扱われます。

 また、「●%の満足度!」という広告は、その根拠や調査方法を提示していない場合や、提示があっても公正な調査方法ではない場合には、虚偽広告として扱われます。

(2)Ⓑ比較優良広告
 「県内一の医師数!」、「肝臓がんの治療で日本有数の実績!」等、他の医療機関と比較して優良である旨の広告は、それが客観的事実であっても、禁止されます

(3)Ⓒ誇大広告
 虚偽ではないものの、事実を不当に誇張して表現することが禁止されます。たとえば、「A学会認定医」と広告されているのに、「A学会」には活動実態がない場合、患者を不当に誘引するおそれがあるものとして、誇大広告として取り扱われます。きちんとした団体による認定であれば問題ありません。

(4)Ⓓ公序良俗に反する内容の広告
 わいせつ・残虐な画像を用いた広告や、差別を助長する表現を用いた広告は、公序良俗違反として禁止されます。

(5)Ⓔ患者等の主観に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談
 患者等の個人の体験談は、個々の患者の状態等によりその感想は異なるものであり、誤認を与えるおそれがあるため、禁止されています。患者等の体験談の記述内容が広告可能な時効であっても許されませんので、ご注意ください。

(6)Ⓕ治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等(いわゆるビフォーアフター写真)
 ビフォーアフター写真のすべてが禁止されるわけではありません。あくまで、「患者等を誤認させるおそれがある」ものに限って禁止されます。ビフォーアフター写真に、通常必要とされる治療内容・費用等に関する事項、副作用等に関する事項等の詳細な説明を付せば、広告可能です。逆に、十分な説明を記載しないままビフォーアフター写真だけを掲載する場合は、広告規制違反になりますので、ご注意ください。

7.医療広告規制に違反した場合

 これに違反すると、行政指導立入調査を受ける場合があります。悪質な事案では、広告の中止命令是正命令を受けることになり、こうした命令にも従わなかった場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則規定も定められています。

8.最後に

 医療広告規制の詳細は、厚労省作成の「医療広告ガイドライン」にまとめられています。また、同じく厚労省が作成した「医療広告ガイドラインに関するQ&A」や「医療広告規制におけるウェブサイトの事例解説書」も大変参考になります。

 もっとも、ご多忙な医療機関の経営者の方や医師の方が、こうしたガイドライン等を細かく確認するのは大変かと思います。医療機関の広告についてご不安な方は、ぜひ一度、この分野に詳しい弁護士にご相談ください。

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