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日常業務に関する法律問題

診療所・クリニックにおける休憩時間中の電話番

1.はじめに

 診療所では、従業員が一斉に昼休憩をとると電話対応が出来なくなるため、昼休憩中の従業員に電話番を任せていることがあるかと思います。電話が架かってきたときに対応する以外は自由に過ごしているのだから、その時間について賃金を支払う必要はないと考えておられないでしょうか。休憩時間は、従業員が使用者の業務から解放されている時間です。従業員が、使用者から命じられて休憩時間中に業務を行っていたとなると、その時間は休憩時間でなく労働時間となる可能性があります。

 以下では、従業員の休憩時間中に電話対応を任せる問題点についてご説明します。

2.休憩時間の原則

(1)3つの原則
 休憩時間には、労働基準法で定められた3つの原則があります。それは、①途中付与の原則、②一斉付与の原則、③自由利用の原則です。3つの原則の内容は、以下のとおりです。

(2)途中付与の原則
 休憩は労働時間の途中に与える必要があります。始業時間の前に休憩時間を与えたり、終業時間の後に休憩時間を与えたりすることは、たとえ従業員から同意を得ていても労働時間の途中に休憩を与えているとはいえないため、認められません。

(3)一斉付与の原則
 休憩時間は、事業所の労働者全員に、一斉に与えなければなりません。つまり、労働者を交代で休憩させることは、原則としてできないのです。

 このことから、従業員の一人に電話番を任せることは、一斉付与の原則との関係で問題になるようにも思われます。

 しかし、一斉付与の原則には2つの例外があります。一つは、休憩時間を一斉に与える必要がない旨の労使協定を結んでいる場合です。労働組合または労働者の過半数代表と労使協定を締結することで、一斉休憩を適用除外にすることができます(労働基準法第34条2項)。

 二つ目は、特定の業種については一斉付与の例外とされていることです(労働基準法40条)。運輸交通業、商業、金融・広告業、映画・演劇業、通信業、保健衛生業、 接客娯楽業及び官公署の事業については、一斉に休憩を与えなくてもよいと定められています。小規模の診療所やクリニックの場合、保健衛生業にあたるため、一斉付与の原則の適用除外となります。ただし、大規模の病院やメディカルサービス法人(いわゆるMS法人)は、原則どおり休憩時間を一斉に与える必要があります。

(4)自由利用の原則
 労働基準法34条3項では、「使用者は、第1項の休憩時間を自由に利用させなければならない。」とされています。休憩時間は労働者が自由に利用できなければならないのです。そのため、休憩していたとしてもその間に命じられた業務をしている場合は、休憩時間とはいえません。

 それでは、今回のように診療所の従業員が昼休憩中に電話番をする場合、これは休憩時間に該当するのでしょうか、それとも労働時間にあたるのでしょうか。

 労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいいます。労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に決まります。そして、使用者から業務の準備行為等を事業所内で行うことを義務付けられた場合には、原則として労働時間に該当するものと判断されます。

 診療所の従業員が昼休憩中に電話番をする場合、院長からの指示により業務に従事していると考えられます。つまり、使用者の指揮命令下に置かれていると考えられるため、休憩時間でなく労働時間とされる可能性が高いでしょう。労働時間と判断された時間については、当然、賃金を支払わなくてはなりませんし、休憩を取らなかったことで時間外労働が発生した場合には割増賃金を支払う必要もあります。

3.診療所としての対策

 従業員に昼休憩中の電話対応を命じた場合、その時間は休憩時間でなく労働時間と判断されるでしょう。このとき、休憩に入る全ての従業員が電話対応をしていたとなると、全従業員に対し、賃金を支払い必要が発生するおそれがあります。これを避けるため、昼休憩中の電話対応は当番制としておくべきでしょう。事前に電話対応を行う従業員とその対応時間を決めておけば、対応する従業員以外の昼休憩について休憩時間該当性が否定されることはないでしょう。なお、当番の従業員には、別途休憩時間を与える必要があります

4.まとめ

 医療機関では、その業務の特殊性から一般的な企業とは異なる労務管理がされていることが少なくありません。仮に、不適切な労務管理を行っていた場合、後日、多額の未払賃金等を支払う必要が出る可能性があります。労務管理を怠ったことで問題が大きくなってしまうと、その解決に多くの時間・費用を割かなくてはなりません。これを避けるためにも、労務に関してご不安のある病院・クリニック経営の方は、まずはこの分野に詳しい弁護士にご相談ください

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